ブロックチェーンと暗号通貨ーーデジタル技術が資本主義を書き換える可能性

──Web3がもたらす「贈与経済圏」の再生と強化

贈与経済圏を強化するための方法として、これまで助け合いの精神や地域コミュニティの再生といった方向から考察してきました。しかし、今回はもう少し別の方向からその可能性を探ってみたいと思います。それは、Web3技術を活用した独自経済圏の創出というアプローチです。

ベーシックインカム(BI)に対しては「国家による監視や統制の道具だ」と言って批判する人もいますが、今回紹介するのは、そうした人たちにこそ知ってほしいユニークな視点からのアプローチです。

■ Web3とは何か?

Web3とは、ブロックチェーン、スマートコントラクト、自律分散型組織(DAO)などの技術を総称する概念です。ここでの文脈に沿っていえば、暗号通貨を基盤とし、その上で価値の交換をふくむ、さまざまなコミュニケーションを可能にするオンラインエコシステムを構築するための技術を指します。

このWeb3を活用すれば、たとえば地域や趣味といった共通項でつながる人々が、ネットワーク上で意思疎通できるだけでなく、そこだけで使えるトークンを介してモノやサービスをやり取りする独自の経済圏を自分たちで構築することができます。

またそのトークン(擬似貨幣)の設計次第では、現状の市場原理(貨幣原理)とは異なる原理で動く別種の経済圏を創設することも不可能ではありません。それらは「市場経済的でない」という意味で贈与経済圏に属するとみなせますが、そうした小規模ながらも個性的な贈与経済圏がいくつも創出され、社会に縦横に張り巡らされれば、贈与経済圏はそれだけ豊かで強靭なものとなります。そしてそうなれば、それによって強化された贈与経済圏は市場経済の侵食を防ぐ盾としても十分な抵抗力を備えるようになるでしょう。

■ 地域通貨運動から学ぶもの

じつは私もかなり深く関わっていたのですが、2000年代に勃興し、世界各地で展開された地域通貨運動の根底にあったのもこれと似たような考え方でした。中央銀行が発行する貨幣によるそれとは別の独自の通貨圏を創設することで、地域経済を活性化させるとともに市場経済による侵食と破壊から地域社会を守ろうとしたのです。しかし、実際には、市場経済とその貨幣権力が持つ圧倒的な力の前に、多くのプロジェクトが挫折を余儀なくされました。なかでも普及の障害となったのは、取引のたびに記帳が必要になるといった手続き上の不便さでした。そうした利便性の低さに加え、既存のお金がもつ利便性の高さ、およびその貯蔵機能を含む絶大な貨幣権力という大きな壁に阻まれた末、運動自体がしだいに退潮に追い込まれたのです。

しかし、Web3とベーシックインカムという二つの条件がそろえば、こうした取り組みが再び息を吹き返す可能性があります。Web3は市場経済(貨幣経済)に負けない利便性の高い取引環境を提供し、一方でBIは貨幣権力の相対的低下をもたらすからです。それらがあれば過去の地域通貨運動を退潮に追いやった二つの高い壁ーー貨幣経済と貨幣権力ーーは、完全に乗り越えられないまでも、ある程度回避可能となります。そうして、先に述べたような市場経済の枠に収まらない、個性的なエコシステムが多数誕生すれば、贈与経済圏はそれだけ彩りを豊かにし、やがては既存のお金がもつ権力およびそれを根底にもつ市場経済の浸透圧力にも十分対抗しうる強靭さを備えるようになるでしょう。

■ BIは管理の道具ではなく、自由と抵抗の基盤である

したがって、BIに対する批判者が言うように、国家権力がBIを盾に市民を管理・支配するような事態が仮に起こったとしても、実際はそれほど心配する必要はありません。こうしたエコシステムが地下経済のごとく無数に張り巡らされていれば、万が一、政府によってBIの支給が停止されたとしても、生活への影響は最小限度にとどまるからです。それどころか、これらの贈与経済的ネットワークは、国家権力の暴走に対して抵抗を続ける人々の連絡網になるとともに生活を支える基盤にもなりえます。つまり、BIがもたらすそうした新しいエコシステムは、権力に抗う人々にとって抵抗の「砦」をも提供することになるのです。

こうして見ると、BIが国家権力による管理の道具などになりえないばかりか、むしろそれに対する抵抗の手段を市民に提供する可能性すら秘めていることがわかるのではないでしょうか。

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