
貨幣権力を弱めるもうひとつの方法
──贈与経済圏の再生がもたらす「絶対的」な力の低下とは
前の記事では貨幣権力を低下させる方法として、もっぱらそれを相対的に低下させるアプローチを検討してきました。あえて「相対的」なアプローチに限定したのは、先にも述べたように絶対的な低下には多くの問題が伴うからです。
しかし、だからといって絶対的にその力を低下させる方法がないわけではありません。ここでは、それについても検討してみましょう。
ただし、繰り返しになりますが、絶対的な貨幣権力を低下させるといっても、それを完全に無力化させるわけでありません。そんなことをしたら、経済が回らなくなってしまうのはすでに確認した通りです。そうではなく、ここでいうそれは、経済全体に大きな影響を与えない程度に、「過剰な分を削ぎ落とす」という意味です。そもそも、現在の貨幣権力はあまりに強すぎます。過剰なその権力が人と社会を大きく歪めている現状を見れば、少々弱めた方がむしろ適切であり、望ましいのは明らかでしょう。
それでは、絶対的な貨幣権力を低下させるには、どうしたらよいのでしょうか。
お金に頼らなくても生きられる環境をつくる
ここでひとつ考えられるのは、「お金の必要性を低下させる」というアプローチです。
「お金の必要性を低下させる」とは、文字通り、貨幣がなくてもある程度生きていける社会環境をつくることです。
もちろん、現代のような貨幣経済が高度に浸透した社会で、貨幣を完全に排除する生活はほぼ不可能です。しかし、100%完全に排除するのは無理でもある程度、それへの依存度を減らすことは十分可能です。
では、どうすれば私たちの生活において、お金への依存度を下げることができるのでしょうか。
ここで鍵になるのは、贈与経済圏の再生・強化です。
「贈与経済圏」がもたらす、お金に縛られない暮らし
贈与経済圏とは、貨幣とは異なる論理で動く経済領域のことです。たとえば、家族や地域コミュニティといった場がこれにあたります。そこでは、モノやサービスのやりとりは貨幣を介した「売買」ではなく、「贈与」や「相互扶助」といった関係性の中で成り立ちます。要するに、そこはお金がなくても生きていける生活空間のことです。
一例を挙げれば、日本の農村部や地域コミュニティには今でも「お裾分け」の習慣が残っています。お裾分けとは、よそからもらったものや自分の家で採れた野菜などを近所の人に分け与えることです。そのため、そうした地域では、食べ物がどこからか回ってきて、腹を満たす分にはとくに困らなくなります。つまり、それだけお金に頼らない生活が可能になるということです。
このような贈与経済圏が再生され、広がっていけば、昔そうであったように人々は日常の一部を貨幣に頼らずにまかなえるようになります。そして、お金がなくても生きていけるようになればお金の必要性は低下し、その分、お金への執着心も必然的に低下します。そうなれば結果として、貨幣が持つ社会的な力ーーすなわち貨幣権力そのものが弱まることになります。
これが、贈与経済圏を再生・強化することで貨幣権力を絶対的に低下させるメカニズムです。
このように贈与経済圏の再生・強化は、貨幣権力を絶対的に低下させる上で有効なアプローチのひとつになりえます。しかし、そうなると問題は、どうやって贈与経済圏を強化するのか、という具体的な方法ですが、これについては、また後ほど詳しくみていきたいと思います。
