
AIの衝撃――資本主義の行き詰まりを加速するもうひとつの理由
資本主義が限界を迎えている——心のどこかで薄々、そう感じている人は多いのではないでしょうか? このシリーズではこれまでその理由を主に経済と社会の仕組みから説明してきました。しかし、そこには実はもっと直接的で、逃れられない要因があります。 それが「AIとロボットの進化」です。
私たちは今、歴史上もっとも大きな分岐点にいます。「将来、仕事がなくなるかも」というレベルの話ではありません。「人間が働くこと自体が不可能になる」未来が、すぐそこまで来ているのです。
■ AI・ロボットが「人間の労働」を置き換える時代へ
AIとロボットによる代替は、もはやSFの話ではありません。 工場のアームロボット、農場の自動収穫機、物流ドローン。物理的な労働は急速に機械へと置き換わっています。サービス業でも、セルフレジや配膳ロボット、AIチャットボットが当たり前の風景となりました。
さらに衝撃的なのは、知的労働(ホワイトカラー)への侵食です。翻訳、ライティング、プログラミング、さらには高度な経営分析まで、かつて「人間にしかできない」とされた領域をAIが凌駕し始めています。これは、大多数の労働者が職を失う未来が、単なる悲観論ではなく、論理的な帰結であることを示しています。
■ 「新しい仕事が生まれるから大丈夫」という楽観論の限界
技術革新によって古い仕事が消えても、新しい仕事が生まれてきた――。これまでの歴史はたしかにそうでした。
しかし、今回は事情がまったく異なります。
最大の問題は「AIの進化速度が速すぎる」という点です。
新しい職種が生まれたとしても、それがAIによって置き換えられるまでの期間は数十年ではなく、数年、場合によっては数ヶ月しかありません。人間が新しいスキルを習得するのには時間がかかりますが、AIはその数百倍の速度で進化します。
仮に新しい仕事を覚えたとしても、数年後にはその仕事も自動化されてしまう。ではどうするのか?
また一から学び直すしかありません。
もちろん若いうちならなんとかなるかもしれません。しかし歳を取れば、短期間でのスキル習得は難しくなります。人間の能力には限界がありますし、しかもその能力は老化とともに低下するからです。
■ 仕事の奪い合いは「国内」ではなく「世界規模」になる
さらに深刻なのは、デジタル化とグローバル化による競争の激化です。
これからの時代、仕事を奪い合う相手は国内に限られません。とくにオンラインで完結する仕事は、インドやアフリカ、東南アジアの技術者とも競合します。しかも彼らのほうが賃金が低く、教育水準が高く、AIを活用する能力も十分にあります。
つまり、競争相手は文字通り「世界中の人々」。したがって求められるスキル水準は上がり続け、下がることはありません。
これは一体何を意味するのでしょうか?
それは、たとえていえば、医者から弁護士、さらに会計士、IT技術者、宇宙物理学者へと半年ごとに転職を繰り返すようなものです。
しかし、当然ながら普通の人間には、そんなことは到底不可能です。
■ AIによる大失業時代ーーそれは悲劇か希望か?
結局のところ、AIとロボットの進化の前には、人間は遅かれ早かれ労働市場から弾き出される運命にあります。これは過度な悲観でも主観的な感傷でもなく、技術的な観点から見てほぼ確実に起こるであろう客観的なシナリオです。
たしかに仕事がなくなる未来は恐ろしいものと映るかもしれません。しかし一方でそれは、労働を前提にした社会のほうを見直すべき時期が来ているというサインでもあります。
AIによって人間が労働から解放される未来を、悲劇にするのか、それとも新しい社会の始まりにするのか。
その選択は、私たちの手に委ねられています。
