「仮想通貨=666の獣」なる奇怪な説
「仮想通貨=666の獣」説なるものが出回っているらしい。666の獣というのは、ヨハネの黙示録に出てくる人類の終末に現れて世界を支配するとされる悪魔のことである。
まったく陰謀厨には困ったものだ。そもそも仮想通貨は一時期流行った地域通貨と同じく「反中央銀行」の発想から生まれたものである。「666の獣」というなら各国に張り巡らされた中央銀行とその元締めとしてのアメリカドルによる一極支配体制がすでにそうであろう。
地域通貨はそうした一極支配体制、人民管理体制に対するカウンターとして発想されたものであり、仮想通貨は単にそのネット版として開発されたものにすぎない。したがって、その出自からもわかるように仮想通貨が目指しているのはハイエク流の併行通貨制であり、けっして単一通貨による世界一極支配体制などではない。
もちろん現金廃止とからめて仮想通貨による人民支配という動きがあるのは承知している。だが、その本来のコンセプトが「通貨発行権を市民の手に取り戻す」ことにある以上、そしてネットに自由がある限り、そうした動きに対しては新たな代替通貨の開発という形で必ずや市民の側からの反旗が翻る事になるだろう。
そもそもオーウェルがその小説「1984」で描いたような人民管理体制への動きは、仮想通貨とは別なところで以前から着々と進行しているものだ。結果がそう見えるからといって原因までも無理矢理結びつけるのは「後付けの誤謬」というものである。陰謀論がみな間違っているというわけではない。しかし陰謀論が揶揄されるのは、そのような牽強付会的かつ杜撰な思考方法のゆえであることに陰謀論者はいいかげん気づくべきである。