増税によらず、インフレも招かないベーシックインカムのための資金調達法

現在の貨幣システムへの批判を展開しているエレン・ブラウン女史のブログに「増税によらず、インフレも招かないベーシックインカムのための資金調達法とは?」という記事がありましたので、抄訳してご紹介いたします。

増税に頼らず、インフレも招かないベーシックインカムのための資金調達法とは?

すべての市民にユニバーサルベーシックインカム(UBI)を保証するという政策は、ロボットが人間の労働を奪うという現実の前にますます支持を集めている。しかし、増税によらず、あるいはハイパーインフレも誘発することなくUBIを私たちの社会に導入することは可能なのだろうか? 9月にアスペンで開催された暗号通貨に関する会議に出席したパネリストたちの多くは否定的な見方を示した。これはそれに対する私の反論である。

(中略)

●ロボットが人間の労働を奪いつつある
●その結果、UBIへの関心が高まっている
●福祉は怠惰を助長する可能性がある
●UBIにはそのような懸念がない

いくつかの研究結果が示しているように、万人にお金を一律に配分する方が福祉サービスにお金を使うより予算的に安上がりである。英国の福祉予算を5000万人の成人に直接支払った場合、一人あたりの年間収入は5,160ポンドになる。

しかし、その金額は基本的な生活水準を維持する上では十分ではない。税金を引き上げる必要があるし、他の予算が削られることもある。これらは一般的にいって政府があまり歓迎したがらない政策だ。

ここには、もう一つの選択肢がある。「質的緩和」である。銀行にブタ積みされるような量的緩和策ではなく、市場に直接お金を注入するという方法だ。過去にも取りざたされたことのあるこのヘリコプター・マネーをヨーロッパの政治家たちはいま再び調べ直しはじめている。

税金に頼らず、生産を刺激する金融政策としてのUBIが提案されている。ノーベル賞を受賞した経済学者ジョセフ・スティグリッツはこのことをこう説明する。

政府が投資したお金は市場を何度も循環する。したがってその投資はひとつの仕事を生み出すにとどまらず複数の仕事を生み出す。

その結果、経済は最初の投資額以上に成長する。税収が増え、失業者への給付金が減る。その結果、政府の財政状態が改善される。

(中略)

●「質的緩和」がハイパーインフレをもたらさない理由
●9年間にわたる3兆7000億ドルもの量的緩和策によってもハイパーインフレにはならなかった
●ここには貨幣の流通速度が関係している
●歴史上発生したハイパーインフレは外債が関係しており、国内の支出とは無関係

低迷する経済状況においてUBIは在庫を一掃し、新しい需要を生み出すことができる。ロボットは食料も衣類、電子機器も購入しない。需要を生み出すのは消費者であり、消費するためにはお金が必要だ。ロボットが人間の仕事を奪えば、残された選択肢はUBIか、あるいは人口の半分を飢えにさらすかのどちらかだ。UBIは福祉ではない。それはむしろ、21世紀に生きる私たちが当然受け取るべき配当金である。オートメーション化の進展は、私たちを労働から解放し、より多くのレジャーを楽しんだり、より意味のある探求に時間を費やしたりすることを後押ししてくれるはずだ。