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和風住宅に秘められたエコロジー思想

   

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住むなら和風住宅という人が増えています。
いまあらためて考えたい和風住宅の魅力。

風土が育んだ日本の木造住宅
見直される和風住宅

和風住宅が見直されています。そのせいでしょうか、最近町の本屋には和風住宅をテーマにした書籍が増えてきたような気がします。また郊外の住宅地には、従来の純和風住宅にくわえ現代的な感覚をもつ和風住宅ーーいわゆる「和モダン」の家ーーも多くみかけるようになりました。

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そうした傾向を裏づける調査もあります。伝統的な和風住宅に住みたいという人の割合が近年増加傾向にあるのです。しかも面白いことにそうした傾向はとくに首都圏の若い人の間で目立っているのだそうです。

さらにいえば、昨今の古民家ブームもまたその延長線上にあるのかもしれません。朽ち果てるがまま打ち捨てられていた山里の古民家。それを現代の人にも快適に住めるようアレンジして再生するという試みがここへきて各地ではじまっているのです。

戦後からすでに半世紀以上、洋式の生活スタイルにもすっかり慣れたはずの現代日本人が、いまになってこれほど和風住宅にひかれるというのはいったいどういうわけなのでしょうか。もちろん、そこにはさまざまな理由が考えられます。もしかしたら行き過ぎた西洋化に対する反動のようなものもあるのかもしれません。あるいは今の若い人の目からみれば、和風住宅の方がむしろ物珍しく魅力的に映るのかもしれません。

けれど、たとえそうであったとしても、こうしたブームの根底には和風住宅そのものの魅力があることは間違いないでしょう。

自然と風土に育まれた日本の木造住宅

では和風住宅の魅力とはいったいなんでしょうか? といえば、まず、まっさきに思いうかぶのが、木造である魅力です。というのも、日本家屋の特徴としてまず最初に挙げられるのが木造構造という点だからです。では、そもそも日本家屋はなぜ木材でつくられるようになったのでしょうか。

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普通、住宅はその土地でもっとも手に入れやすい素材から作られます。 世界的にみるとアジアの一部の地域をのぞくとほとんどの場所は、樹木にとぼしい草原地帯や荒涼とした砂漠地帯です。そのためユーラシア大陸の多くは、住居といえばレンガあるいは石づくりが一般的であり、木造の住居はむしろ少数派といえるでしょう。中近東やアフリカ大陸、南米などでは土で塗り固めただけの泥の家もみられます。

一方、日本は国土の約7割が森林で覆われた世界でも有数の森林地帯です。当然ながら木材はもっとも身近な素材であり、そのため日本で木造住宅が生まれたのはいわば必然ともいえるでしょう。 けれど、それが長い歴史を通して住宅建築の主流となった背景には、それなりの理由はあるはずです。 なぜなら、そこにあったから使ったという消極的な理由だけでは、日本人がもつ木造住宅に対するこだわりの強さは説明できないからです。 やはりそこには木造ならではのなんらかの魅力があったからと考えるのが自然でしょう。 では、その魅力とはいったいなんでしょうか?

木造住宅には、森林浴効果がある

新築したばかりの木造住宅のなかにはいった時、妙にすがすがしい気分になった経験はありませんか。 じつはこれ、木材に含まれるフィトンチッドと呼ばれる揮発性物質によるもので、最近の研究によるとフィトンチッドには自律神経を安定させる鎮静効果をはじめ、防虫効果、抗菌作用などがあることが明らかになっています。森の中を散歩した時に感じる爽快感も同様のメカニズムによるもので、そのため森林浴効果とも呼ばれています。

おそらく昔の日本人は、このことを経験的に知っていたに違いありません。 昔から銘木として珍重されてきたヒノキやヒバに、一般の木材より多くのフィトンチッドが含まれていることがなによりその証拠といえるでしょう。 日本人が同じ木造家屋のなかでもヒノキ造りのそれを別格と位置づけてきたのも、ひとつにはこの森林浴効果の高さゆえだったのかもしれません。

人間は環境に大きく影響される

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朱に交われば赤くなる、ということわざがあります。ひとは誰とつきあうかによって善くもなれば悪くもなるという程度の意味ですが、同時にひとの人格形成はそれが育った環境に大きく左右されるということをこの言葉は示しています。この環境というものをもっと身近な言葉に言い換えるなら「雰囲気」といってもいいでしょう。 私たちはある空間に入ると、そこの雰囲気を敏感に感じ取ります。 それは視覚や聴覚、触覚といった五感はもちろん、いわゆる「勘」などもふくめたあらゆる感覚能力を総動員して感じる「何か」です。

この雰囲気の違いは、私たちにあまりなじみのない建築物のなかに入った時によくわかります。 たとえば西欧でよく見られる石造りの部屋に入ったとき、多くの日本人はそこに永遠なるものと同時に動かしがたい冷徹な論理性のようなものを感じることでしょう。 またレンガでつくられた建物は、石造りと同様の論理的な構成美とともに大地を思わせる温かいぬくもりのようなものも感じるかもしれません。 このように素材の違いによって住宅がかもしだす雰囲気もずいぶん異なってくることがわかります。 そしてこうした雰囲気の違いが、そこに暮らすひとにもなんらかの影響をおよぼしていることは容易に想像できます。

日本の文化、日本人の心を育んできた木造住宅

それでは、木造住宅はいったいどんな雰囲気をもっているのでしょうか。さきほど木材には心理的な鎮静作用や防虫、抗菌効果があるという話をしましたが、木造住宅がもつ雰囲気はまさにここに集約されているといっていいかもしれません。すなわち、心を和ませる命のぬくもり、あるいは爽やかな清潔感といったものがそうです。

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さらに木材が石やレンガなどの素材と決定的に違うのは、それが生きている素材であるという点です。そのため、そこにはまさに樹木が上へ上へと伸びようとするかのような前向きな成長への意志があります。生きる希望、生きる喜びにあふれた活き活きとしたエネルギーがあります。要するに、私たちがそこが感じるのは、樹木がもつ生命力そのものなのかもしれません。

ところで、こうした木造家屋がもつ雰囲気ですが、これはある意味、日本文化、あるいは日本人の性格そのものといえるのではないでしょうか。柔軟な好奇心にあふれ、何事にも改善を加えずにはいられない向上心、他者との調和をなによりも重視し、そして簡素と清潔を愛する日本人とその文化。それらは木造住宅がもつ生命力にあふれた空間と清々しい雰囲気に見事にシンクロしています。

こうしてみると、長年にわたって日本人の性格と日本文化を育んできたのは、じつは日本の木造家屋そのものだったのかもしれません。逆にいえば、もし日本の伝統家屋が石やレンガづくりだったなら、日本人の性格もいまとはまた違ったものになっていたのかもしれませんね。

木造住宅には、キレにくい子どもを育てる効果がある?

ところで、住宅環境とそこに住む人の精神との間になんらかの関係があるとすれば、ここから木造住宅のもうひとつの魅力がみえてきます。それは木造住宅がもつ子育て効果です。

近年、「キレやすい」子どもの増加が問題になっています。なぜ子どもがキレやすくなったのか、その原因はまだはっかりとはわかりません。けれど一説によると合板などが発散する有害な化学物質によるシックハウス症候群もそのひとつの原因とされているようです。 そのため、最近では、代表的な有害成分であるホルムアルデヒドなどを含んだ集成材ではなく、少々コストがかさんでもできるだけ天然の無垢材を使用することが推奨されるようになってきています。

一方、伝統的な和風木造住宅がこうしたシックハウス症候群とは元来無縁のものであることはいうまでもありません。したがって、もちろん集成材は使用していないという条件付きではありますが、心身ともに健康な子どもを育てる上で、和風木造家屋がベストな選択肢のひとつであることは間違いないといえるでしょう。

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私たち日本人は和室に入るとなぜか心が落ち着きます。理由はわからないけれども、なんだか気持ちが穏やかになってきます。和室には、私たち日本人の心を和ませる工夫でもあるのでしょうか。もっとも私たち日本人がそう感じるのはそれが慣れ親しんだ文化だからともいえるかもしれません。しかし、本当にそれだけが理由なのでしょうか。

面白いことに、日本文化になじみのないはずの外国人もなぜか和室に入ると心が落ち着くといいます。もちろんその理由には、先にふれたフィントンチッドなどの木材がもつ心理的な鎮静作用もあることでしょう。じっさいもうひとつの木造住宅の代表格であるログハウスなども中に入ってみると、なるほどたしかに心が落ち着きます。けれど、ログハウスがもたらすそうした鎮静効果と和室がもたらす独特のやすらぎ感とはどうも質的に異なるものがあるように思われます。

そもそも和室には、部屋のしつらえを含むあらゆるフォルム、色彩が自然と視野の中になんの違和感もなく収まるという特徴があります。そこにはよけいな自己主張は一切ありません。そこにあるのは、調和のとれた受容的な意匠空間です。となると、そこには視覚的な何かも関係しているように思われます。

自然との共生をコンセプトとする和のデザインの魅力

その秘密を解く鍵は、日本文化にあります。
日本文化をひとことで言い表すのはとても難しいことです。ですが、ここであえていうとすれば「共生」という言葉がふさわしいかもしれません。自然との共生、隣人との共生、異文化との共生ーー。日本文化の最大の特徴は、排除の論理ではなく受容の論理にあります。そのことは日本文化が八百万の神様による合議政ともいうべき多神教がその根幹にあることからもうなづけるはずです。

日本文化のエッセンスが共生であるということは、その建築デザインからもうかがえます。日本の建築デザインといえば、安土桃山時代にうまれた数寄屋造りが有名ですが、その特徴は屋根の優美な曲線と自然との一体感を意識した調和的なデザインにあります。それがいかにユニークなものであるかは、外国の建築とくらべてみるとよくわかります。

たとえば、中国建築をみてみましょう。中国建築の特徴は極端に反り返った屋根とそびえ立つ甍にあります。また中世の城郭やゴシック建築など西洋の建物は、周囲を威圧し、自らの存在を強く主張するかのような攻撃的、競争的なデザインが目につきます。

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一方、日本ではそうした自己主張の強いデザインはあまり好まれません。そのため、奈良時代に大陸から輸入された寺院建築は中国同様甍を競い合う自己主張の強いデザインだったのに対し、遣唐使廃止後に 勃興した国風文化の洗礼を経た後にうまれた純和風建築は、いずれも極端な屋根の反り返りを抑え、代わりに風景と調和した優美な曲線へと変わっていきました。

このように日本文化の底流に流れているのは、自然を征服し、押さえつけようとする対立的かつ攻撃的な文化ではなく、自然との調和をはかり、それと上手につきあっていこうという友好的かつ共生的な文化であるといえるでしょう。

かつて日本の浮世絵は、ヨーロッパの美術界に大きな衝撃をあたえました。そのなかにどっぷりひたって生きている日本人にはいまひとつピンときませんが、もしかしたら和のデザインがもつ魅力とその可能性はわれわれの想像力をはるかに超えたものなのかもしれません。

現代のエコロジーとも共鳴する日本文化

ところで、こうした共生的な思想をコンセプトにもつ日本文化は、当然ながら現代のエコロジーとも多くの面で共鳴します。それを端的にしめすのが、日本家屋に隠されたエコロジカルな知恵の数々です。

たとえば、そのひとつに縁側の庇があります。いつも見慣れている私たち日本人には、あってあたりまえのように考えられるこの庇ですが、じつは縁側の庇というのは日本家屋だけの独自の構造物なのです。

この庇の機能にはいったいどういうものがあるのでしょうか。まず庇には、夏場の頭上から照らす暑い直射日光を遮り、冬場には、低い角度から差し込む日差しを取り入れるという調光効果があります。さらに雨を遮り、雨の日にも換気ができるようにするとともに外壁の損傷を防ぐという効果もあります。このように庇には、日光と雨、風を制御することでエネルギー効率を高める機能があります。ようするに庇は、日光や雨、風といった外部の環境と上手につきあうための工夫であり、日本人の知恵でもあったのです。

またこれは日本家屋というより木材そのものがもつ特性ですが、室内の湿度を調節する機能もあります。木材には、梅雨等じめじめした季節には湿気を閉じ込め、逆に乾燥した季節には湿気を発散することで室内の湿度を調節する機能があります。そのため、日本家屋では、エアコンなど人工的な仕組みに頼ることなく、自然のままでも一年中快適な環境で暮らすことができるのです。

こうしてみると、日本家屋の最大の特徴のひとつが、そのエネルギー循環型の構造にあるということがよくわかります。日本家屋には、外の自然環境と室内環境との間のエネルギーを効率的にリサイクルさせるための工夫、知恵が凝縮されているのです。

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さらにこうした観点からみれば、古くから日本家屋に取り入れられて来た借景というのも興味深い考え方です。借景とは、たとえば中庭をつくる際、塀の向こうに見える山や樹木、建築物などを背景として取り込むことで、前景の中庭と背景となる借景とをひとつの有機的な景観として一体化させる手法で、日本庭園における伝統的な技法のひとつとされています。

これは現代のエコロジー用語でいえば、風景を再活用=リサイクルするということであり、同時に風景を共有=シェアするという考え方にもつながります。千年もの長い伝統と歴史をもつ日本家屋は、じつは21世紀の世界にこそふさわしい住宅スタイルなのかもしれません。

世界的に注目されている日本文化

ますますグローバル化する企業の経済活動と歯止めのかからない地球規模の環境破壊ーー。西洋文明の行き詰まりを象徴するかのようなこうした矛盾がいま世界中で大きな問題となっています。

近年、そのためのヒントがもしかしたら日本文化の中にあるのではないかという期待が欧米の知識人のあいだで高まっています。自然を征服し、支配下に置くというこれまでの西洋文明のやりかたに代わって、自然との調和を重視する日本文化のありかたに注目が集まっているのです。

何年か前、ケニアの環境活動家・ワンガリマータイさんが日本の言葉に触発されて「モッタイナイ運動」を提唱したことも、それを象徴する出来事だったといえるでしょう。

さらにいえば、アニメに和食にBENTO…。気がつけば世界はいつのまにか熱狂的な日本ブームになっています。19世紀末、フランスを中心にヨーロッパを席巻したジャポニスム。それに対して現在のブームは、第二次ジャポニスムといっていいかもしれませんーー。こうした世界的な日本ブームの背景にあるのも、現代文明の矛盾を解決し、もうひとつの未来を切り開く切り札としての日本文化への期待であるように思えます。

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もちろん日本文化がそれらの問題を一挙に解決に導く魔法の鍵だというわけではありません。けれど、これからの地球の未来を日本文化がその先頭に立って切り開いていくかもしれない…、すくなくともその可能性があるということは、私たち日本人にとってみれば、なんともわくわくする話ではないでしょうか。

こうしてみると、現在の和風住宅ブームの背景にはさまざまな要因がからみあっていることがわかります。そして、そこにあるのはたんなる懐古趣味や物珍しさからくる一過性の流行ではないこともーー。おそらくそこにあるのは、新しい時代の方向性を示す歴史的なトレンドの最初のあらわれであるように思えます。

さらにもしそうであるなら、私たちはひとつの文明が別の文明にバトンを受け渡す何百年に一度の光景をいままさに目撃している最中なのかもしれません。いずれにせよ、和風住宅を建てるひとが増えることは日本の伝統文化を継承するという意味でも間違いなく歓迎すべきことであるといえるでしょう。これを機により多くの個性的な和風住宅が建てられることを期待したいところです。

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