この世界をよりよいものへと魔改造する「地球ハッキング」のヒントをお届けします。

黙って食え!(マンゴー編)

   

9d61ad90d1b4bed77988731539e4511c_s-300x200

広告

仙人の桃と神々のマンゴー

マンゴーはインドでは聖なる果物とされています。そのせいでしょうか、仏教やヒンズー教には悟りや神々のシンボルとしてもしばしば登場してきます。

ちょうど中国で桃が仙人の果物とされているのとよく似ていますね。 もっとも仙人の桃は食べると神通力が得られますが、神々のマンゴーにはそういうことはなく、たんに哲学的なシンボルにすぎないようです。

これは即物的な中国人と思弁的なインド人という両国の国民性の違いをあらわしているようでもあり、なんだか妙に納得してしまいます。

そんなわけで、残念ながらマンゴーを食べても神通力が得られるわけではありませんが、それでもいちおうは由緒正しい縁起物であることに間違いありません。その哲学的な教えや由来にふれた上で心静かに味わえば、もしかしたら思わぬ功徳が得られるかも…。

世界を旅したマンゴー

マンゴーの原産地はインド北部から今のマレー半島あたりとされています。なかでもインドでは4000年前から栽培されていたらしく、紀元前6世紀に活躍したお釈迦様の言行を記した仏教教典のなかにもしばしば登場してきます。 それほど昔から人々に愛されてきたマンゴーですが、その植生圏は長い間、インド周辺からそれほど遠くまで広がることはなかったようです。その理由はマンゴーの種が大きくて重く、風や鳥など自然の力だけで遠くまで運ばれる可能性がひくかったためと考えられています。

人の手によって広まった例としては、たとえば仏教僧が東南アジア方面に伝えたという伝説や、アレクサンダー大王がヨーロッパに持ち帰ったという記録、さらに古代ペルシャ人が中東や東アフリカにもたらしたという言い伝えなどがありますが、いずれも東は東南アジア、西はギリシャや中近東、せいぜい東アフリカどまりだったようです。 しかし現代では、ご存知のように西アフリカやアメリカ大陸をふくむ世界中でマンゴーが普通に栽培されています。ということは、当然だれかが最初に伝えたはずですが、ではいったいだれがそれらの地域にマンゴーを伝えたのでしょうか。

それがだれだったのか、歴史書をひもといても個人を特定することは容易ではありません。しかしながら、15世紀の末、バスコダガマが開いたインド航路がそのきっかけになったことは間違いないようです。 インド航路の開拓によって、それまで隔絶していたインドと西アフリカ、さらに新大陸アメリカが一本の交易路で結ばれることになりました。そして、それと軌を一にするように16世紀には東アフリカへ、17世紀には西アフリカへ、そして18世紀にはアメリカ大陸へとマンゴーの植生地がじょじょに広がっていったのです。

とはいえ、よくしられているようにバスコダガマがインド航路を開拓したのは、香辛料を求めてのことであり、マンゴーが目的だったわけではありません。しかも、冷凍庫などもなかった当時のこと。仮に販売目的で生のマンゴーを船に積み込んだとしても、ヨーロッパに着くころにはすべて腐っていたはずです。 にも関わらず、利にさとい商人たちがあえてマンゴーを船に積み込んだのはなぜなのでしょうか。 おそらくその理由は単純で、たんに美味しかったからではないかとわたしは思います。 すなわち、ヨーロッパ商人たちがマンゴーを船に積み込んだのは、ひとつには船旅の途中、自分たちが食べるために、もうひとつはあわよくばその種を持ち帰り、どこか適当な場所で栽培・生産することでひと儲けをたくらんだためなのではないでしょうか。

いまもよい商品は宣伝などしなくてもひとりでに広まっていくものです。同様に当時のマンゴーもまたその美味しさゆえに、だれに強制されるわけでもなくひとりでに広まっていったに違いありません。

いずれにせよ、東洋の隔絶された狭い地域で箱入り娘のごとく、ひっそりと育ってきたマンゴーはこうして15世紀の末、おおいなる旅立ちの時をむかえました。そして、その後、何百年という歳月をかけてアフリカからヨーロッパ、そしてアメリカへと世界中を旅した後、それぞれの新天地に根を下ろすことになったのです。 その大航海時代から500年、いまや香辛料は昔ほど貴重なものではなくなりましたが、グローバリゼーション時代の日本でいまふたたびマンゴーが遠い異国の夢とロマンを宿す商品となりつつあるのは興味深いことです。それはたんに歴史の偶然というべきなのか、はたまた歴史は繰り返すということの証左でもあるのか…。

広告

来るか? 一億総マンゴー評論家時代

「果物の女王」と称されるマンゴー。海外旅行などでその美味しさに開眼した日本人も増えているようです。かくいうわたしも、昔インドで食べたアルフォンソマンゴーに感動して以来のマンゴーファン、マンゴーオタクのひとりーー。 一方、そのおいしさゆえか、世界には熱狂的なマンゴーファンがすくなくありません。とりわけ世界有数の産地であるインドやタイなどには、それぞれマンゴーにたいして一家言をもち、そのうんちくを語りだしたらとまらない自称マンゴー通、マンゴー評論家がごろごろいるといわれています。それはちょうど日本人がそばを、またフランス人がワインをあつく語るようなものなのかもしれませんね。 日本ではまだそれほどなじみのないこのマンゴーですが、沖縄や九州などで本格的な栽培がはじまったこと、近年の貿易自由化への流れなどをみると、近い将来、日本人にとってもより身近な果物になることは間違いないようです。でも、そうなると日本にも自称マンゴー通、マンゴー評論家が現れ、たがいにうんちくを傾け合うようになるのでしょうか…。うれしいようなうれしくないような、なんだか妙な気分です。

マンゴーの産地と種類

国内産マンゴー

現在、日本で栽培されているマンゴーは、アーウィン種と呼ばれる品種がほとんどです。果皮が赤みを帯び、一見リンゴのようにもみえることから、別名「アップルマンゴー」とも呼ばれています。もともと南米で栽培されていたものが、アメリカから台湾を経由して沖縄にわたってきたものといいます。 ちなみに宮崎県産のブランドである『太陽の卵』もこのアップルマンゴーのひとつで、一定の基準を満たしたものだけがそう呼ばれています。 その他、キーツマンゴーという品種もありますが、こちらはおおぶりで緑色の果皮が特徴で、とてもおいしいのですが、市場にはあまり出回らないため、幻のマンゴーとも呼ばれています。

メキシコ産マンゴー

現在、日本の輸入マンゴー市場でシェアトップなのがメキシコマンゴーです。メキシコマンゴーは熟すとリンゴのように果皮が赤くなることから別名アップルマンゴーとも呼ばれており、代表的な品種としてはヘイデン種、ケイト種 ケント種などがあります。 輸入マンゴーのなかではもっとも日本人の口にあうマンゴーとされ、「情熱的」とも称されるその濃厚な味わいは多くの日本人を魅了しています。 船便で運ばれるものは船内で追熟しながら日本に到着するため、味に若干ばらつきがあるものの、価格は国産のものにくらべるとかなりお手頃です。

タイ産マンゴー

インド、中国に次ぐ世界有数のマンゴー生産国タイ。日本にとってもメキシコ、フィリピンに次ぐマンゴー輸入相手国です。 タイには約60種類のマンゴーがあるといわれていますが、なかでも有名なのがナンドクマイ種。ナンドクマイとはタイ語で「花のしずく」という意味で、先が尖っていて雫のようにみえることからそう名づけられたといいます。形は勾玉形で、フィリピンのペリカンマンゴーとよく似ています。 しかし、もっとも大きな特徴はその濃厚な甘さととろけるような舌触り。その上、種が薄く肉厚なため食べごたえも十分で、現地でも高級マンゴーとして高い評価を得ています。 ちなみにタイでは、熟したマンゴーだけでなく、熟していない青いマンゴーもおやつ代わりによく食べられています。

フィリピン産マンゴー

日本市場でメキシコと並びシェアトップを競っているフィリピン産マンゴー。このフィリピン産マンゴーを代表するのが、カラパオ種です。マンゴーは一般に勾玉のような形をしていますが、こちらはペリカンのくちばしのような形をしており、そのため別名ペリカンマンゴーとも呼ばれています。 まろやかな甘さとほどよい酸味をもち、マンゴー独特のクセもほとんどありません。そのせいか、日本人のマンゴー通のなかにはこのペリカンマンゴーが一番という人も少なくないようです。

インド産マンゴー

マンゴーの原産地であり、いまも世界一のマンゴー生産国でもあるインドには1500種以上の品種があるといわれています。そんなマンゴー大国インドを代表的するのがアルフォンソ種とケサー種。 アルフォンソ種は、インドでもっとも有名な品種でゴア原産。「マンゴーの王様」とも呼ばれ、甘み、酸味、香り、舌触り、すべてにおいてバランスがとれています。またマンゴーに多く含まれる、細胞の老化を抑える抗酸化作用のあるベータカロチンが他品種の4倍以上含まれているといわれています。 ケサー(ケシャール)種はインド三大マンゴーのひとつでグジャラート州原産。香りと甘みが強く、絹のようになめらかな食感が特徴です。味にクセがなく日本人の口に合うマンゴーです。 その他、日本に輸入されているものにラングラ種、チョウサ種、マリカ種などがあります。

台湾産マンゴー

沖縄のさらに南に位置する南国・台湾にも多くのマンゴーがあります。台湾産マンゴーは、大きくわけると三つ。愛文(アーウィン)種と土マンゴー(在来種)、およびその他の品種です。 このうち愛文(アーウィン)種は20世紀、アメリカから持ち込まれたもので、果皮が赤みを帯びたいわゆるアップルマンゴーと呼ばれる品種です。 土マンゴーは、15世紀のオランダ統治時代に東南アジアから台湾に持ち込まれたもので、鮮やかな緑色の果皮と濃厚な香りが特徴。種が大きく、食べられる部分はそれほど多くないのが難点ですが、独特の味わいが楽しめます。 その他、金煌一号や台農一号など新しい品種も近年、数多く登場しています。 この台湾産マンゴー、日本でのセールスポイントは露地栽培ならではの自然な甘さと価格の安さにあります。ということは、同じアーウィン種である日本産マンゴーにとっては今後も台湾産マンゴーが最大のライバルになりそうですね。

広告
アースハック ツイッターでもつぶやいてます

 - 雑感,